薫の家に向かう途中、コンビニでお菓子やお酒を買い
里枝は「今日は楽しむぞ!」っと楽しそうに話した
薫の部屋へ、里枝を招きいれ
昔撮った写真のファイルを肩を並べながら見入った
人の温もり・・・人との会話・・・
久し振りに味わう優しい時間・・・
「これ良いねー」
「こういうの好き」
「あっ!可愛い」
「綺麗だねー」
薫が撮った里枝の写真も見せると、里枝は恥ずかしそうにはしゃいだ
写真と同じ笑顔で・・・
「あはは。なんだーこの顔」
「へんな顔」
「これはダメでしょー」
ページを捲るにつれ、写真の笑顔は悲しい表情へ・・・
それと同時に、里枝の表情も悲しくなる
薫は、言葉を発せ無かった・・・ただ隣に居るだけ・・・
里枝の肩が、震えてるのを感じる・・・
それでも言葉は出なかった・・・
ただ、優しく震える肩に腕を回し、そっと身体を寄り添った
里枝は堰を切ったかのように、
悲しい顔になる理由
鞄に入ってた2本のぬるい缶コーヒーの事
公園で1人涙を堪えてた事
を話し始めた。涙をポロポロ溢しながら・・・泣きじゃくりながら・・・
里枝には、付き合ってる彼氏がいる
彼氏と言っても、相手は既婚者で会える日は限られてる
今日も公園で待ち合わせした
彼の好きな缶コーヒーを買い
何時間待っても彼は来なかった
こんな事は、多いみたいで奥さんや子供を優先され、デートをキャンセルされる
何度も、別れ様と思っても、いざ逢うと好きな気持ちが、別れを切り出させない
今日来なかったら、終わりにしようと決めていた・・・
薫は、何も言わずに肩を抱いたまま、聞いていた
目に涙をイッパイ溜めながら・・・でも、泣かないように我慢した
話を終えると、暫く沈黙が続く
公園の時とは違い、苦しくなかった・・・
腕の中に温もりを感じていたから。
また突然里枝が、
「飲もう!」
っと提案した。まだお昼過ぎなのに・・・
2人は時計を見て、クスクス笑い出した。
「休みなんだから気にしない!」
「飲むぞーー!」
真っ赤な目で・・・素敵な笑顔を振りまきながら
「薫、答えたくなかったら答えないで良いよ」
「・・・何?」
「薫って、笑顔あんまり見せないね・・・何かあった?」
薫は、顔の傷の事を聞かれると思ったので、意表を着かれビックリした。
気を遣われてると思い、少しだけ・・・寂しくもなった
「・・・うん。最近人間不信で・・・笑えなくなったかな」
「そうなんだー。笑うって元気になる特効薬だよ。笑えないと、なかなか治らないよ・・・」
「・・・うん」
「無理しなくて良いけど、泣きたい時は泣いて、笑いたい時は笑いな私みたいに!」
「うん」
「心の傷が一番厄介だからね」
その言葉が、薫の心の傷を優しく撫でてくれた。
少しだけ・・・心が元気になった。
「里枝・・・顔の傷ね彼の暴力なんだ・・・」
自分で言ってビックリした!今まで聞かれても答えなかったのに、自分から告白した
「身体にもいっぱい痣があるし・・・」
「浮気され、問い詰めたら暴力振るわれ・・・怖かった・・・」
「殴られながら、SEXされて・・・」
里枝と同じ様に、心の中の暗い部分から、仕舞い込んだ言葉が吐き出された
涙と一緒に・・・一気に止め処なく・・・
薫は身体を震わせながら、手で顔を覆った・・・
里枝は無言で優しく薫の髪を撫でた・・・何度も何度も優しい手付きで
段々心が暖かくなってきた・・・
涙が止まり・・・顔を上げると、里枝の素敵な笑顔があった
目を見詰めあい・・・
里枝の笑顔は、もっともっと素敵な、引き込まれるような笑顔に
薫もつられて笑った・・・声を出して笑った
久し振りに心の底から笑った
「薫はその方が可愛いよ」
「あはは」
里枝は、机にあるカメラを手にし薫に向けた
「もっと笑って!!」
「イヤだよーこんな目腫れてるもん・・・」
「良いの良いの」
何枚も何枚も撮った。
「笑顔で居ようね・・・お互いに」
「うん」
「辛かったら、また公園でね」
「うん」
また涙が溢れた・・・ファインダーを覗いてる里枝の肩も震えてた
「ほらー笑って」
「あはは・・・泣いてるのか笑ってるのか分んないよ・・・」
「素敵だよ薫の笑顔」
カメラのフィルムが巻き戻る音がすると
里枝はカメラを机に戻し、薫に近付き、優しく顔の傷にキスした
「これで早く治るよ」
「・・・うん」
力強く抱きしめられ・・・
「心の傷も治るよ」
「・・・うん」
「ありがとうね・・・1日付き合ってくれて」
「ううん・・・」
そっと腕を緩めて、唇に優しいキスをくれた
その後、何回公園へ行っても、保育園児が居ても、里枝の姿はなかった
薫も公園に足を運ぶ回数が減り・・・殆ど行かなくなった。
心に傷が出来、一人で解決出来ない時は・・・
また現れてくれると信じて・・・
あの素敵な笑顔で・・・
あの素敵なキスをくれると・・・
完
テーマ : 短編小説 - ジャンル : 小説・文学
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